養豚現場における環境負荷の低減と経営支援を両立する画期的なマイルストーンが打ち立てられました。株式会社Eco-PorkとENEOS株式会社が共同で推進する「アミノ酸バランス改善飼料の給餌」プロジェクトが、養豚を対象とするプログラム型プロジェクトとして国内初となるJ-クレジットの認証・発行を正式に達成しました(Eco-Pork発表資料)。

本取り組みは、肥育豚に給餌する配合飼料の粗タンパク質(CP)含有率を適切に抑え、余剰な窒素排出を削減することで、家畜排泄物処理に伴い発生する温室効果ガス(一酸化二窒素:N2O)の排出を抑制する仕組みです。参画した養豚農家では平均13%の温室効果ガス(GHG)排出削減を達成しており、創出されたクレジットの販売収益は農家へ還元されます。資材高や輸入肉との価格競争が続く養豚業界において、環境対策を「コスト」から「新たな収益源」へと転換する新時代のビジネスモデルとして大きな注目を集めています。

養豚初、プログラム型J-クレジットが待望の初発行

温室効果ガス排出削減量を国が認証する「J-クレジット制度」において、個別の農家が単独で申請手続きや厳格な測定・検証を行うことは、膨大な書類作成や検証費用の負担が大きく、極めて高いハードルとなっていました。そこで導入されたのが、取りまとめ事業者(プログラム運営者)が全体の制度設計と申請窓口を担い、複数の生産者が参画できる「プログラム型プロジェクト」です。

Eco-PorkとENEOSが主導した本プロジェクトは、養豚分野におけるプログラム型として国内初の認証・発行事例となりました。農畜産業振興機構(alic)の調査レポート等でも指摘されてきた通り、日本の畜産現場における脱炭素の推進には、生産者の事務負担を最小化しつつスケールメリットを発揮できる枠組みが不可欠でした。今回の初発行は、全国の養豚農家が日常の飼養管理を通じて手軽にカーボンクレジット市場へアクセスできる道を切り開いた点で、極めて高い社会的意義を持ちます。

アミノ酸バランス飼料とデータ管理の概念図
※ 生成AIで作成されたイメージ: 飼料中のアミノ酸バランス最適化と養豚現場におけるデータ管理のイメージ

エサの粗タンパク質を1〜3%抑え、N2Oを削減する仕組み

本プロジェクトの中核を成す技術は、J-クレジット制度の方法論「AG-001:家畜へのアミノ酸バランス改善飼料の給餌」に基づいています。豚が成長や筋肉形成に必要なアミノ酸(リジン、メチオニン、スレオニン等)を合成アミノ酸の添加で精密に補いつつ、飼料全体の粗タンパク質(CP)含有率を従来比で1〜3%程度低減させます。

豚は体内で利用しきれなかった余剰タンパク質を尿中へ尿素として排泄します。これが糞尿処理工程(堆肥化や浄化処理)で微生物によって分解・酸化される過程で、強力な温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)が発生します。N2Oの地球温暖化係数(GWP)は二酸化炭素(CO2)の約273倍(IPCC第6次評価報告書基準)と極めて高いため、エサの段階で窒素の過剰摂取を絶つことは、劇的な温暖化抑制効果をもたらします。

学術的知見と現場の安全性
「タンパク質を減らすと発育(DG)や枝肉歩留まりが落ちるのではないか」という懸念に対し、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)や各大学の研究でも、制限アミノ酸を適切に配合したアミノ酸バランス改善飼料は、豚の増体成績や飼料要求率(FCR)、肉質を損なうことなく、糞尿中の窒素排泄量を20〜30%程度低減できることが実証されています。

参画農家は平均13%のGHG削減を達成、データが証明する効果

今回の初認証において特筆すべきは、実証に参画した農家全体で平均13%という確かなGHG削減効果が確認された点です。これを可能にしたのが、ICTを活用した精密なMRV(測定:Measurement、報告:Reporting、検証:Verification)体制の構築です。

J-クレジットの認証には、「いつ、どの豚群に、どのような規格の飼料を何トン給餌したか」を正確に証明するデータトレーサビリティが厳格に求められます。Eco-Porkが提供する養豚経営支援システム「Porker」などを活用し、日々の飼料搬入ログや給餌実績をクラウド上で一括管理・可視化することで、農家側の帳票作成負担を大幅に削減しながら、第三者検証に耐えうる客観的なデータを担保しました。

当メディアの過去の業界分析やナレッジ蓄積を振り返ると、たとえば山形県の平田牧場が推進する再エネ電力全面移行によるGHG約46%削減(サステナポーク)のように、大規模な設備投資を伴う脱炭素アプローチが先行してきました。一方で今回の取り組みは、「大規模な設備更新を行わずとも、日常の飼料設計とデータ連携の見直しだけで二桁のGHG削減を達成できる」という、全国の中小規模農家にとっても極めて再現性の高い実践モデルを提示したと言えます。

脱炭素を「コスト」から「収益」へ変える新たな循環モデル

現在、国内養豚経営は、依然として高止まりする配合飼料価格に加え、海外市況の変動や為替動向による輸入豚肉との激しい競合に晒されています。特にハム・ソーセージ等の加工原料となる割安な冷凍豚肉(ブラジル産やEU産)の流通や、外食・精肉売り場での北米産チルドポークとの価格競争は激しさを増しています。

このような厳しい経営環境下において、環境対策に伴うコスト増を農家単独で吸収することは困難です。今回のモデルは、ENEOSのカーボンオフセット需要やクレジット仲介力を梃子に、削減したGHG価値をJ-クレジットとして市場で売却し、得られた対価を参画農家へ還元する経済的インセンティブを確立しました。環境負荷を低減しながら収益の複線化を図るこの仕組みは、今後の持続可能な養豚経営における強力な武器となるはずです。

エサの配合見直しとデータ連携から始まる脱炭素経営。現場の生産成績を維持しつつ、環境価値を新たなキャッシュフローへと転換する取り組みに、ぜひ自農場でも着目してみてはいかがでしょうか。

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※本記事は pigtrend 編集部が一次情報・公的データに基づきAIリサーチ支援を活用して構成・編集・検証しています。個別の疾病診断や投薬、投資判断については管轄の獣医師や専門機関へご相談ください。

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